文化・芸術

2008/03/06

人間合格 <08073>

今、紀伊国屋サザンホールで公演中のこまつ座の芝居を観て来ました。

主人公は、太宰治こと津島修治。
大学入学から、その半生を、六つの写真をベースにした場面構成。

 ・昭和5年…修治が大学入学で上京した高田馬場の下宿屋にて、生涯の友となる佐藤、山田との出会い。「平等な社会」を目指す彼らの活動にのめり込む修治。が、津軽の大地主が生家の修治にとって、その出自が後半生を苦しめる事となる。

 ・昭和7年…社会主義活動に身を投じる三人は、向島の貧乏長屋で、たわし売りをしながら、その思想を浸透させるべく地道な活動をするも、その弾圧を受ける現実の中、山田は舞台へ、佐藤は地下活動に潜り、修治は番頭の中北に郷里へ連れ戻され、ばらばらとなる。

 ・昭和11年…前年の自殺未遂と睡眠薬中毒の治療に入院する修治の元に、逃亡中の佐藤が転がり込む。束の間の再会を喜び合う2人。が、官警に追われる身の佐藤にとって、ここは安住の場ではなく、またも逃亡生活へと身を投じる。

 ・昭和17年…三鷹の修治の借家を訪れる中北。前年末に太平洋戦争に突入した日本。正月祝いと、緒戦の戦勝に浮かれる中北。その後、旅立った仙台で修治、中北、山田が再会…そしてその宿泊した旅館には、何と板前で佐藤が潜り込んでいた。

 ・昭和20年…戦後、旅劇団の巡業で修治の故郷津軽金木村を訪れた山田。戦争中、軍事劇で一世を風靡するも、8/15の終戦を期に社会は一変…アメリカ賛美、資本主義賛美の劇風に様変わりをしなくてはならなくなる。貧しいこの時代、劇団員への給与の遅などが原因で、劇団員の大部分に逃げられてしまい、山田は精神が崩壊する。折りしも、戦後初の総選挙を控え、修治の兄文治の当選をさせるべく、山田の舞台を使っての「買収工作」を画策する中北。その卑劣な行為と、時代の価値観の変化の無常さに怒りの声を挙げる修治。

 ・エピローグ…玉川上水のほとりに佇む屋台。佐藤、山田両名の死の知らせを同時に聞き酔い潰れる修治。その傍らでは、近くの行員達が、「組合」を作った事を祝って、ささやかな祝宴が開かれる。


全編、井上ひさしらしいウイットに飛んだ台詞回し、それに絡む音楽がなかなか印象的でした。
4年前に観た、「花よりタンゴ」の時にも感じましたが。
同行人の感想にもありましたが、演じる俳優さん達が楽しそうだったのが良かったかと。

ただ、共産主義活動が下地にある所為か、心の端っこがやや痒くなる様な表現も幾つか(汗)。
太宰の小説は幾つか読みましたが、活動にのめり込んでいる…よりは、出自に対する苦悩…の方のイメージ尾が強かったので、今日の芝居で幾つか発見が有ったのも事実。

あとは、昭和20年の場面で、3人が15年掛けて主張していたにも関わらず、「終戦」と云うある日突然全ての価値観が「変節」してしまった人間たちへの怒りは、どれほど痛かった事か。
これについては、亡父も当時感じていた事で、生前に散々聴かされていましたが、あの変化は今では考えられない程に強烈な事態だった様です。


それにしても…

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